2011年6月17日金曜日

穴掘り拷問と企業経営


世の中でもっともきつい拷問は「穴掘り拷問」らしい。
囚人に一日中大きな穴を掘らせ、次の日にはその穴を埋めさせ、また次の日には穴を掘らせ・・・以下繰り返す、というもの。
ナチスの強制収容所だか旧ソ連時代のシベリアだかで(要はロクでもない時代のロクでもない場所ということ)流行ったらしいが、1週間もするとどんなに屈強な囚人も音を上げ、発狂する者も少なくなかったという。

目的のない作業の繰り返しは人を疲弊させ、やがて狂わせるということだ。

スターバックス再生物語」を読んでいて、スタバが拡大一辺倒の時期に、一人の社員が「我々は走り続けている。だが何のために走っているのかわからない」と漏らすシーンがあった。
会社全体が、目的を見失って穴掘り拷問をしていたのだ。

以下は僕のささやかな経験から。

「穴のサイズ」は目的にはなりえない。
「20XX年に売上高◯億円・営業利益◯億円をめざす」→「深さ5メートルの穴を掘る」と言っているだけだ。

「穴の大きさの順位」も同じだ。
「世界一の△△をめざす」→「隣の収容所より大きい穴を掘る」と言っているに過ぎない。

いずれも多少は競争心を刺激する効果はあるかもしれないが、人の心に芯から火をつけることはない。

人の心に火をつけるのは、「事業を通じて世の中にどのようなインパクトを与えるか」、より具体的には「誰を/何を手段に(強みに)/どのように幸せにするか」という使命感だと思う。

前職オプトでは退任まで13年間、総じて幸せで楽しい時間を過ごしたけど、とりわけエキサイティングだったのは2001年から2004年だった。
僕の在籍期間中では、会社としての使命が最も明確だった時期だったからだ。

2001年に独自の効果測定システムを世に出し、広告効果を全て数値化して顧客(広告主)と共有することを始めた。
当時としては画期的であるかわりにタブーに近く、各方面からバッシングも受けたけど、顧客には一円たりともムダな広告費を使わせないという自負があった。
あいつらはCPAしか語れないとか、あいつらのせいでメディアが育たないとか当時から、そして未だにdisられ続けているけどw、まあそれくらいインパクトがあったし、何より顧客の支持は絶大だった。
その結果として業績は毎年倍々で伸び(市場全体も伸びていたが、市場平均をゆうに上回って成長した)、2004年には上場をはたした。

以来、使命(=穴を掘る目的)は企業の全てを決めるというのが僕の信条です。

株式会社イルカはまずは早く製品を世に出すのがさしあたっての課題だけど、発売していきなりヒットしたとしてもw「いつも自転車と共に行動するライフスタイルを広めること」を通じて「自転車で人と地球をハッピーにする」という使命を忘れずに経営にあたろう、なんてことを雨の午後にスタバで「スターバックス再生物語」を読んで思いました。

はい、まずは発売ですよね。わかってますわかってますってw

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実は「スターバックス再生物語」はあんまり面白くない。

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写真はレイキャビクのショッピングモールにて。テレタビーズが好きなのだ。毎度のことながら本文とは関係ない。


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