2013年11月14日木曜日

データと実物、そして試作と量産の間に横たわる暗く冷たい溝について

タイトルをムダに村上春樹調にしてみましたがいかがでしょうかダメですかそうですか。

中国太倉の工場で進んでいるiruka試作第四弾の途中チェックのため、先週現地に行ってきました。

いつも午後便で行くので、着いたらばんごはん。今回はモンゴル風羊肉しゃぶしゃぶに舌鼓。
この鍋、ガスも電気も使わないんですよ。中央の煙突みたいな筒の中に炭が入ってて、上の蓋を開け閉めして火力を調整するのです。んまかった。羊アイシテル。


二日目三日目は工場に詰めて、あれこれ作業&指示。


工場側でスタックしていた点はほぼ解消できたので、たぶん年内には完成して引き取りに行けると思います。
んで、それを元に諸々検証して量産のための図面起こしに進むわけですが、現時点で既にわかっていることがあります。

それは【もうちょいゆるく作らにゃいかんな】ということ。

詳しくいうと、量産では製造誤差があることを前提として、それでも狙いどおりの形状・機能になるように、より冗長性をもたせた設計にする、ということです。

例えば、折りたたんだときにデータ上では前輪と後輪がぴったり平行に重なるようになるはずが、試作第四弾の途中チェック段階ではどうもずれちゃってる。
どこか一ヶ所が致命的に間違っているというわけではなく、0.5ミリずつ大きさの違うパーツ同士が0.5°違う角度で溶接された結果、誤差が蓄積されて末端では結構な違いになってしまう、という感じ。
これがデータと実物の間の溝。

それでも試作は一台だけなので、ずれた箇所を丁寧に調整していけば最終的にはデータどおりに完成させることはできる。
しかし量産では百台単位で作るわけなので、一台一台の調整にそんなに時間をかけるわけにはいかない。ていうかできない。
これが試作と量産の間の溝。

というわけで、量産に進むためには、製造誤差があっても成り立つような「ゆるめの」設計が必要になるわけです。
具体的には、折りたたみヒンジの可動域を広げておいたり、パーツ間のスペースを大きくしたり、内部機構をよりシンプルにしたり。
一点モノを作る「工房」と、マスプロダクトを作る「工場」では、設計思想そのものが違うということですね。

ともあれ全体的なジオメトリやルックスは良い感じ。
カッコいい自転車になるのは間違いない。

続報を待て!

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毎度内容と関係ない冒頭の写真はドイツ最高峰、ツークシュピッツェにて。標高3000メートルの山頂までケーブルカーで一気に登る。


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