2013年11月15日金曜日

レジェンドに会う

irukaの試作第四弾は、仮にO社と呼ぶが、ある台湾メーカーの中国工場で作っている。

今や世界最大の自転車メーカーとなったGIANTをはじめ、台湾の自転車会社の多くは1960年代・70年代に設立されている。
1966年に設立されたO社も、その例外ではない。

彼らのコミュニティの中で、創業者世代は1st Generations、その息子・娘たち後継者世代は2nd Generationsと呼ばれている。

台湾がまだ貧しかった頃に起業した1st Generationsは、多くがいわゆる叩き上げの人々だ。
GIANTの創業者はウナギの養殖業から、BD-1で有名なPacificの創業者は教師からの転身であるなど、職歴も学歴も様々である。
既に息子や娘に経営を任せて引退したり会長に退いたりした1st Generationsも少なくないが、今でも彼ら同士の人間関係が台湾における自転車ビジネスを大きく左右していると聞く。

小さな部品工場からスタートして、O社を台湾有数の折りたたみ自転車OEMメーカーに育て上げた創業社長W氏もまた、1st Generationsの代表的な人物であり、レジェンドの一人である。

W氏の長男にして現在中国工場のGMを務めるE氏は、2nd Generationsの典型だ。

2nd Generationsは、皆スマートでかっこいい。
多くが欧米や日本の大学の留学経験があり、バイリンガルは当たり前、オーダーメイドのパリっとしたスーツを着こなし、物腰も一様にジェントルである。
1st Generationsの期待と愛情を一身に受け、お金をかけてエリートとして育てられてきたのだ。

E氏とは以前一度食事をご一緒したが、流暢な英語を操り、日本語もわずかだが理解する、知的なジェントルマンである。体にぴったり合ったスーツはいかにも高価そうで、実に洗練された印象であった。

しかし、これまで創業者W氏にはお会いする機会がなかった。
1st Generationsの多くは本社のある台湾で過ごす時間が長いし、海のものとも山のものとも知れない新規ブランドとの取引の場にいちいち顔を出さないのだ。

ところが。
今回お会いできました。

たまたま中国工場に来ていたW氏が、僕たちが作業していた部屋にふらっと現れたのだ。

特に目的があったわけではなく、irukaを見て「なかなかおもしろいじゃん」みたいなことを言って、直立不動の社員たちに二言三言アドバイスめいたことを言って、冗談を言って、ガハハハと笑って、ふらっと出て行って、両手いっぱいに部品類を抱えて戻って来て「これ参考にしろよ」みたいなことを言って、またふらっと出て行った。

ランチをご一緒して、記念写真を一枚。


なんか、かっこよかったなあ、レジェンド。
体操着みたいなTシャツの上に作業服と人民服の合いの子のようなジャケットを着て、さらにその上に丈の合わない背広を着て(スーツより背広という方がしっくり来る)、洗練という言葉の対極にいる感じだけど。
何と言えばいいのだろう、月並みだけど、内面の魅力というか。

男はかくありたいものです。

レジェンドにご馳走してもらったスッポンの炒め。生姜とニンニクがこれでもかというくらいきいてて美味だった。
ごちそうさまでした。


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冒頭の写真はインスブルック旧市街中心部、黄金の小屋根。神聖ローマ皇帝が作ったそうです。


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