2011年1月18日火曜日

内定率報道に見るマスコミの傾向と対策


まず本日付のこちらのニュースをご覧ください。(→リンク切れ用魚拓

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「大卒の就職内定率68・8% 2年連続で過去最低」

厚生労働省と文部科学省は18日、今春の大学卒業予定者の就職内定率(昨年12月1日現在)が、68・8%となり、調査を開始した平成8年以降、過去最低だった前年の同時期を4・3ポイント下回り、過去最低を2年連続で記録したと発表した。
国の推計では、今年3月に卒業予定で就職を希望する学生は約66万人。そのうち、約24万人がまだ内定がない計算で、厚労省は「先行きの見通しが不透明な現状で、企業の採用活動が冷え込んでいる。学生にとっては非常に厳しい状態が続いている」と話している。
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いやー10人に3人が就職できないんだー。就職氷河期ぱねえ。
記事読んだらそう思いますよね。

で、ググってみたらこんな資料(厚労省・文科省調査 大卒就職内定率の推移)を見つけた。抜粋すると


年度2005200620072008200920102011
12/1時点内定率74%77%80%82%81%73%69%
4/1時点内定率94%95%96%97%96%92%


つまり毎年12/1時点では内定率7-8割程度でも、翌4/1には9割以上の学生が就職してるってこと。概ね12/1時点の内定率+15%〜20%が最終的に就職を決めてる感じ。
今年の内定率は過去最低だということは確かだけど、これまでのトレンドを見ると4月には9割そこそこの学生は就職できているでしょう。
少なくとも10人に3人は就職できない、なんてことはない。

でもさ、上の記事を読む限り、そんなこと一切書いてないよね。一切。
3割の学生が内定がなく就職できそうにない、としか読めない。

それでも10人に一人は就職できないんだー。新聞にも「厚労省は「先行きの見通しが不透明な現状で、企業の採用活動が冷え込んでいる。学生にとっては非常に厳しい状態が続いている」と話している」って書いてあるしなー。
と思いますよね。

次はこちらの資料(リクルート調査 大卒求人倍率の推移 *民間企業就職希望者)。抜粋すると


求人総数(a)就職希望者数(b)求人倍率(a÷b)
2010年73万人45万人1.6倍
2011年58万人46万人1.3倍


確かに求人倍率は去年に比べて落ちてます。
でも、1倍はゆうに上回ってるんですよ。

規模別で見ると1000人以上の大企業の求人倍率は0.6倍(競争率1.7倍)だけど1000人未満では2.2倍(競争率0.5倍)。業種別で見ると金融業の求人倍率は0.2倍(競争率5.0倍)だけど流通業は4.2倍(競争率0.2倍)。
つまり確かに2011年3月卒業の大学生は10人に一人は就職できそうにないけど、求人総数は不足しておらず、学生と企業の条件ミスマッチが本質的な原因なんじゃないかと。

だからといって大学生に「甘えるな、贅沢言わず入れるところに就職しろ」なんて言うつもりはありません。
ただ、言いたいのは、こういうことも上の「内定率過去最低」の記事には一切、ホント一切書いてない、ということ。

ついでに同じリクルートの資料を見ると



求人数就職希望者数
1990年78万人28万人
2011年58万人46万人
増減率-26%+64%


バブル最盛期に比べて求人数は4分の3に減ってる。それは確か。でもそれ以上に就職希望者数が6割以上も(!)増えている。
それもそのはずで、1980年代後半(つまり1990年前後に卒業)は3割台だった大学進学率が、今はゆうに5割を超えてるんですね。
そりゃー内定率も下がるわなー。むしろ内定率9割ってがんばってる方じゃない?
・・・なんてことも当然ながら記事には一切出てきませんね。

繰り返しますが、僕は今の大学生が甘えてるとか言うつもりは一切ありません。
ただ、正確な現状認識がない限り良い施策が打てるはずないのに、僕も含めて多くの人が正確な現状認識ができていないのは確かでしょう。

マスコミはなんでこういう報道の仕方をするのか。

・・・その方が「『学生がかわいそう』という構図を作りやすい=より『売れる記事』になるから」ですよね。

ということで結論:マスコミ報道は鵜呑みにしない。

もう一つ:たぶんレガシー大企業の求人なんて今後も増えないよ(景気によって一時的に増えても構造的には増えないでしょ)。我々ベンチャーががんばらないとね(株式会社イルカは超少数精鋭を標榜していますがw)。

ついでに:新聞社は一定期間過ぎると記事URL消すとかいい加減やめないすかね。魚拓とるのとか面倒すぎる。

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写真は渋谷区にて。ビルの外階段て意味なく好き。なんでだろな。


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