駐輪場と来たら放置自転車問題に触れねばなりますまい。
ここでいう放置自転車とは、自転車を道端や駐輪場に置いたまま捨ててしまう「置き捨て自転車」のことです。
まずはファクトを把握しましょう。
少し古いですが、東京都のレポートがありました。
「処分台数=撤去したら持ち主が取りに来なかったので廃棄処分した台数」として推移が出ていますね。
東京都では毎年40万台の自転車が撤去から廃棄されていて、増加傾向であることがわかります。
東京都の人口は1300万人なので、人口比でざっくり考えると(乱暴な計算だけど)全国では毎年400万台前後の自転車が置き捨てられていると推測されます。
日本では毎年900万台前後の自転車が新たに販売されてますから、置き捨てた人の半分が自転車に買い換えているとしても、新車需要の2割強が放置自転車の撤去を起点に創りだされている計算です。
これはちょっとすごいな・・・。
ではなぜこんなに置き捨てられてしまうのか?
僕の考えは「撤去されるから安い自転車を買う→安い自転車だから撤去されても取りに行かない、というスパイラルが起きている」です。
もう一度先ほどのグラフを見てみましょう。
グラフ中には廃棄台数だけでなく、撤去台数と返還台数が載っています。
1994年(平成6年)くらいからずっと、返還台数は50万台弱でほぼ一定しています。
その一方で、撤去台数は1994年の73万台から2006年(平成18年)では92万台と実に3割近く増え、それに比例して廃棄台数も1994年の32万台から43万台に急増しているのがわかります。
つまり、撤去されても取りに来る持ち主の数は「一定割合ではなく」「一定数しかいない」、すなわち撤去台数を増やせば増やすほど廃棄台数が増えてしまう、というのが現状なのです。
なぜ取りに来ないのか?
「返還にかかるコスト > 撤去された自転車の残存価値」となっているからです。
撤去自転車を返してもらうのに、新宿区では3000円、中野区や豊島区では実に5000円払う必要があります。
ここで、各国の自転車の平均販売単価をご覧ください。
日本 | ドイツ | オランダ | フランス | イタリア |
1.1万円 | 4.6万円 | 7.9万円 | 3.3万円 | 3.4万円 |
2004年のデータなので現時点ではユーロ下落の影響で差は縮まっていると思いますが、それにしても日本の平均単価1.1万円て。。。
よほどの新品でない限り、1万円で買った自転車を5000円の費用と時間と手間をかけて返してもらいにはいかないでしょう。
悲しいですが、これが現実なのです。
自転車の価格に関しては、政治がどうこうではなく、我々メーカーが「高くても欲しくなる自転車」を作るのが第一ですね。
率直に言って、日本の自転車業界はメーカーも販売店も単価の下落を嘆くばかりで、単価を押し上げる自助努力がまったくもって足りないと思っています。
その上で提言。
自治体は撤去一辺倒の放置自転車対策を見直すべきです。
「撤去を増やすと廃棄が増える」のです。
東京都のレポートには「撤去を増やしたから放置(駐輪場以外の駐輪)が減った」との記述がありますが、下のグラフを見ると駐輪場の収容能力自体も増えているので、撤去の強化がどれだけ駐輪場利用を促しているのかわかりません。
もちろん一定の効果はあるとは思いますが、コスト(保管所の運営や人件費)に見合っているかというと甚だ疑問です。
どう見直すべきか?
一つは駐輪スペースを増やすことです。
自転車の本質を考えると、大規模な駐輪場が一箇所にあるよりも、小規模な駐輪場が街中いたるところにある方が便利です。
どうも役所というのは駐輪場というと「しっかりした箱を作らねば」と思ってしまうようですが、小規模であれば前回書いたように一定規模以上の商業ビルには駐輪場の設置を義務付けるとか、タイムズ24のような時間貸し駐車場を数台分借りあげて公的な駐輪場として運用するとか、民間の駐輪場設置に補助金出すとか、まだまだ工夫の余地は大きいと思います。
・・・と思ってたら、実例がありました。
「放置自転車ゼロに 寺町通四条下ル、市助成で駐輪場新設」ですって。
(元記事・魚拓)
それにさあ、撤去する方もされる方も嫌じゃないですか。むかつくし。
やっぱり人間は北風より太陽ですよ。
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irukaは来週からまた中国の工場にいって試作第三弾の製造に着手します。「高くても欲しくなる自転車」作りますよ。
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写真は知人夫婦に生まれた赤ちゃん。生後3週間。カワユス。萌え死。
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