2012年3月2日金曜日
拡散する前に考えよう
武田邦彦・中部大学教授が被災地瓦礫の受入に反対して書かれたブログが、Twitterなどで結構な勢いで拡散していました。
原発の話題についてはもうブログは書くまいと思っていたのですが、あまりのトンデモぶりにこれはスルーできないと思い、以下謹んでツッコミます。
武田先生は、瓦礫の持ち出しは汚染を全国に広げるとして、以下のようにおっしゃっています。
(引用ここから)
汚染の可能性
放射能の量としては、1キロ8000ベクレルが基準値なので、2300万トンでは拡散量は約200兆ベクレルになり、日本人ひとりあたり150万ベクレルに相当する。これは1キロ40ベクレルというまともな食材汚染の限界から言うと一人あたり37年間、汚染された食事をすることを意味する。
(引用終わり)
瓦礫1kgあたり汚染8000Bq × 瓦礫総量2300万t = 全国に拡散する汚染総量 約200兆Bq
200兆Bq ÷ 日本の人口1.3億人 = 150万Bq/人
150万Bq/人 = 1kgあたり40Bqの汚染食品を2.8kg × 365日 × 37年食べ続けるのと同じ
という計算をされているわけですね。
勘違いなのか故意なのかわかりませんが、ここには以下3つの根本的な間違いがあります。
瓦礫1kgあたり汚染8000ベクレル
8000ベクレルという数値は、政府が「1kgあたり8000ベクレル以下の『焼却灰』なら埋め立てていいよ」と言っている基準値であり、実際の汚染度でもなければ、そもそも『焼却前の瓦礫そのもの』に関わる基準値でもありません。
受入側の多くの自治体は「1kgあたり100ベクレル以下の瓦礫」を受入基準としていますが、実際の汚染度は、例えば静岡県島田市が「岩手の瓦礫を調べたら1kgあたり15ベクレルでした」と発表したのに対し、瓦礫受入反対派の方が陸前高田の瓦礫を計測して「1kgあたり41ベクレルも汚染してる!」と懸念を示しているくらいのレベルです。
100ベクレルとしても・・・8000ベクレルの80分の1ですね。
瓦礫総量2300万トン
被災地の外で処理されるのは、全瓦礫の2割だそうです。武田先生もブログの前段でそう強調されているのですが、なぜか後段では「全ての瓦礫が日本全国に拡散する」として計算しています。
一人あたり150万ベクレル→1kgあたり40ベクレルの汚染食品を37年食べ続けるのと同じ
先生、瓦礫食べちゃってますよね?瓦礫って各家庭に配られるわけじゃないですよね?しかるべき場所に集めて埋め立てられるわけですよね?
もちろん、放射性物質が空中に舞って呼吸で体内に入ったり、焼却灰が雨に溶けて飲料水として飲んじゃった、みたいな懸念はあるでしょうが、食べるのとはわけが違います。
というわけで、より正確に書きなおすとこうなります。
瓦礫1kgあたり汚染100Bq(多くの県の受入基準上限) × 瓦礫総量2300万t × 20%(被災地外での処理率)= 全国に拡散する汚染総量の上限 4600億Bq
→受入上限値を用いても武田先生の計算の400分の1。実際は1000分の1を下回るでしょう。
瓦礫は各家庭に配られるわけではないので、国民一人あたりを計算しても意味はないですが、参考までに1.3億人で割ると1人あたり3500ベクレル。
瓦礫は食べるわけではないので、食品に換算しても意味はないですが、参考までに3500ベクレルのセシウム137が付着した瓦礫をまるごと食べたとしても、内部被曝の総量は45マイクロシーベルト(= 0.045ミリシーベルト)。
いや、本当に意味がないですが、武田先生の論法に沿って計算してみただけですので悪しからず。
*ベクレルとシーベルトの換算はこちらのサイトを使いました。
僕は瓦礫受入は被災地の早期復興のために早急に進めるべきと思っていますが、安全と考えるか危険と考えるかは主観ですから、反対だという人ももちろんいらっしゃるでしょう。
異なる考えがあるのは当然ですし、それでよいと思います。
ただ、これだけは主張したい。
武田先生の発言に限りませんが(武田先生については特に注意が必要ですが...)、この種の情報は、安易に拡散する前にいったん自分の頭で正しいかどうか考えてみませんか?
これくらい、ググって電卓を叩けばすぐ検証できるんですから。
僕のこのブログも、拡散前にまずご自分で検証をお願いしますねw
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他にも先生はブログ中に「瓦礫の量は阪神大震災とさほど変わらないのに、なぜ今回は被災地の外に持ち出すのか」「瓦礫の処理費用単価が阪神のときより3倍高い。根拠なく不当だ」などと書かれています。しかし、阪神でも千葉や岡山など他県が処理に協力していますし、コストについては海水の塩分洗浄や放射線検査の費用が余分にかかる上に被災地域が広汎なため搬出コストも高いという説明が公式になされていますね。
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瓦礫受入に賛否あるのは理解できますが、例えば岩手県の釜石市や宮古市から福島第一原発までの距離は、東京からの距離とほぼ同じくらいであることは知っておいた方がよいと思います。
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写真はフィリピン、サンジュアンにて。カラフルな漁船。
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1 件のコメント:
通りすがりのものです。
私もtwitterから例の武田先生のブログを読み疑問を持ちました。
私が検証したのは200兆ベクレルの部分、瓦礫総量に焼却灰の基準値を掛けてしまっている点だけですが、こちらでは相当検証なさっているようですね。
分かりやすいミスなので訂正が入るかと思いましたが、3月8日時点ではそのままのようです。↓
http://takedanet.com/2012/03/post_f506.html
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