2011年9月6日火曜日

続報・irukaオリジナルキャリア



6月に書いたエントリの続報です。

irukaオリジナルキャリアの第一回目試作を御殿場にある某工場にお願いしていまして、先日完成品が届きました。

irukaに最適化した設計であるものの、他の標準的な小径自転車でも汎用的に使えるようにしています。
irukaのミッションは「自転車で人と地球をよりハッピーにすること」で、その手段が「いつも自転車と共に行動するライフスタイルを広めること」。
ベストなのは折りたたみ自転車irukaとそのオリジナルアクセサリを使ってもらうことだけど、「私は他の自転車の方がいい」という人にも、アクセサリだけでも使ってもらってハッピーな自転車ライフを送っていただきたい、と考えているからです。



基本機構とジオメトリだけ実現したT1モデルですので意匠的なデザインは一切ほどこしてないのですが、日本が誇る金属加工マエストロの手による実物は仕上がり上々。
溶接なんかほんと美しいです。

で、駐車場で走行テストの図。
相変わらず肝心の製品画像は隠してます。いつもごめんなさいw





この後は公道に出て走ってきましたが、基本的な性能はばっちりだと思います。
自分で言うのもなんですが、かなーーり画期的な製品ですw

さらにこのエントリを書いてる間に、並行して進めていたオリジナルバッグの試作が届きました。
こちらも自信の製品なので、改めて書きたいと思ってます。

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写真は安曇野・長峰山頂にて。


2011年8月22日月曜日

My グロービッシュ


中国の工場でのコミュニケーションは基本的に英語。
前回行ったY社工場には一人だけ日本語がわかるマネージャーがいたが、日本語で話しても結局他の参加者向けに英語か中国語でもう一度訳す必要があるので、英語の方が便利。

などと書くといかにも僕がバイリンガルのようだが、残念ながら事実は違うw
中国に行くようになってから、レアジョブなどで泥縄式に英会話強化にいそしんでいるところ。

日本人は英会話に関してもメンツを重んじる国民だと言われる。
確かに書店に行くと「ネイティブと思われる英語」とか「ネイティブに笑われない英語」みたいな、言語の本質的な目的である「コミュニケーションをいかに成立させるか」よりも、いかにメンツを取り繕うかにフォーカスした英語本が並んでいたりして、おもしろい。よく考えるとネイティブと勘違いされた方が逆に不利なのにね。

といいながら実は僕も割とそのケがあったんだけど、中国に行くようになってから完全に変わった。
ネイティブぽい言い回しを知っていても、ノンネイティブ同士の会話では逆に意味が通じにくくなることが多いし、それがかっこいい言い方かどうかもお互いわからない。
今はコミュニケーションを正確に成り立たせることに100%集中して、簡単で誤解されにくい単語/言い回しを使うこと、とにかくゆっくり話すこと、できるだけ短い文章で一文ごとに相手の理解を確認しながら進めること、を心がけている。

例えば前回、パーツの選定の話をしていて

We won't use these parts on the next prototype.

みたいなことを言ったところ、どうも話が噛み合わない。
確認してみると、相手は won't を want だと勘違いして真逆の意味に捉えていた、なんてことがあった(want は want to だろって?だから相手は僕が間違えて to を落としたと思ってるわけ。彼らも前置詞とか冠詞なんてバンバン落とすから)。

英語が得意な人同士では考えられないだろうけど、まあ僕と中国人の間ではこんなことが頻繁に起こる。
もどかしくもあるが、それでもやはり、直接コミュニケーションできるというのは良いものです。
将来雇う株式会社イルカ社員は、英語、というかグロービッシュ必須。

日本人と英語に関してはいろいろと思うところがあるけど、とりあえず今日は won't より will not か don't の方が誤解がなくて良い、という低レベルの教訓でエントリを終えたいと思うw

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レアジョブというのは、フィリピン人講師とスカイプで話す英会話サービスの一つ。月5000円で毎日30分話し放題。
さらに安い後発会社も出てきているようだけど、「日本人1000万人が英語を話せるようにする」という企業ビジョンのファンなので、よほどのことがない限り使い続けるつもり。
ただ、ウェブサイトが絶望的にダサいのはユーザーとしてもファンとしても何とかしていただきたいw

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写真は御宿にて。夏空。


2011年8月17日水曜日

製造業、西回りの長き旅路


先週行った常州のY社工場はとにかく巨大だったが、さらに印象的だったのが「若い工員が多い」ということ。

若い、というのは10代。

もちろん大人の工員も数多くいて、溶接やホイール組などの工程ではいかにも「熟練」といった感じのベテラン工員が多いが、デカール貼りなどいわゆる単純作業の工程は大多数が10代の工員で占められている。

15〜19才の人口は、日本が300万人に対して中国は1億人。
高校進学率は、日本が95%に対して中国は40%強。

15〜19才の非就学人口をざっくり計算すると

 日本=300万人×(1−0.95)=15万人
 中国=1億人×(1−0.40)=6000万人

その差なんと400倍。

「世界の工場」たる中国を支えているのは、(言い方はあまり良くないけど)安価かつ豊富な労働力なのだと実感する。

日本で高校進学率が40%台だったのは1950年代の前半。つまり高度成長期が始まった頃。
その後、経済成長とともに高校進学率も年々高まって1970年代半ばには90%台に達し、以降は高度成長の終焉とともに横ばいが続いている。

つまるところ高度成長期というのは第一次産業から工業への労働力シフト(=地方から都市への人口移動)であって、都市への人口移動が落ち着き高学歴化が進むことで労働力の増加ペースが落ちると、あとは知識集約型の産業モデルにシフトしていかないと経済成長も止まるという、それってつまり今の日本だよね、という話になってしまう。

中国も一人っ子政策で急速な高齢化が予想されている上に、都市部では高校進学率が7割を超えるなど成長期の日本と同じく高学歴化が進みつつある。
アメリカの大学・大学院への留学者数が、日本人は2万人強なのに対し、中国人は15万人近くまで増えているそうで、高学歴志向は日本以上かもしれない。

となると、「世界の工場」の役割がリレーのバトンのようにイギリスからアメリカ、日本、そして中国へと西回りで移動しているように、いずれその役割は中国からベトナムやインド、そして中東、アフリカへと移って行くのだろう。
西回りが世界を一周してヨーロッパに戻る頃には、世界はどうなっているのかな。

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写真は常州の自転車工場にて、溶接と塗装を終えて組み立てを待つフレームたち。


2011年8月16日火曜日

試作第三弾スタート


先週日曜、中国でのiruka試作第三弾ミーティングに向かおうと成田に着いたら、上海の台風でまさかの欠航。
振替便も満席だったが、空港でMacを開いて格安航空券サイトからチケットを取りなおし(インターネット万歳)、水曜の便で中国に飛ぶことができた。

ミーティングは生産的だったけど、実はミーティングそのものに至るまでいろいろありw
試作第三弾は、第二弾を作った江蘇省・太倉市の工場ではなく、常州市にある台湾資本の工場Y社で進めている。

太倉市の工場の経営体制が変わって不都合が出てきたため、プロジェクトの窓口であった台湾企業W社(太倉市の工場に同居して営業マーケ部門を請け負っていた)が新たにY社を製造委託先としてアレンジした、というわけ。

Y社は欧米ブランドを中心に年間300万台の自転車を製造する指折りのOEMメーカーであるとともに、自社ブランドで某メジャー折りたたみ自転車も展開している。
自転車業界人曰く新参ブランドがOEMを打診しても通常は相手にされないそうだが、今回はW社社長の父親とY社社長が親しいため受けてもらえることになったらしい(中国人は我々が思っているよりもはるかに人間関係を重んじるように思う)。
さらに欧米の販路や知財管理の実績(早く言えば中国の違法コピー品対策)も豊富にあるなど、製造のみならず販売のパートナーとしても心強い。

一方で、引く手あまたの巨大工場なので、ロットが大きいとは言えないirukaの生産にどれだけ注力してもらえるかなど、課題もある。

良い方向に進んでいるけど、まだそう簡単にはいかないと思っている。
というか、そう簡単にはいかないと思っておいた方が良いということを知っている、という感じか。

これまで見た中でケタ違いに大きかったY社工場の写真をどうぞ。











やはり入り口には巨大な壺が。お約束。


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冒頭の写真は安曇野・烏川渓谷にて、ヤマアジサイ。


2011年8月8日月曜日

工業製品と美しさ


愛用のiPodクラシックに、ガタがきはじめた。

箱状のステンレス部に、前面のアルミ部カバーが嵌めこまれているわけだが、嵌め込みがゆるんできたのか、アルミ部が浮いて隙間ができている。

ネジや溶接を使わずに組み立ててある分すっきりして美しいが、圧入してあるだけなのでステンレス部の外縁が少しへたるだけで嵌め込みがゆるんでしまうのだ。
買ってからちょうど1年だから、ちょっと早いよね。



これは非常に重要な示唆で、工業製品において、美しさと強さを両立するのは簡単ではない、時としてトレードオフであるということ。

自転車も溶接やネジ止めを使わずに組み立てることができたらだいぶ印象が変わるはずだけど、現時点では技術的に無理。
irukaは主にアルミチューブを溶接してフレームを作るので、量産時には特にビード(溶接痕)をどこまで処理するかが強度・コストと美しさの見合いで重要な判断になってくる。

まあ、量産前にまずは試作第三弾。
今日は本来中国の工場でミーティングしているはずが、台風で出発便が飛ばずリスケになったので暇ですw

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僕はAppleの犬なので、逆に新モデルが出たら悩まず買える理由ができてうれしかったりするw 倒錯してるなあ。

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冒頭の写真は御宿・岩船海岸に至る隧道出口。鎌倉の切り通しみたいでなかなかの風情。


2011年8月6日土曜日

明日から中国


明日8/7より三日間、中国へ。
試作第三弾の打ち合わせのため、irukaとして延べ7回目の訪中です。

訪問地の常州はブリヂストンサイクルの工場があったり、自転車製造の一大集積地。
上海に飛んで、太倉で一泊してから向かいます。
実は中国の製造委託先で経営の変更があり、今回は仕切りなおし的なところもある。

ほぼまとまっている試作第三弾の設計データは、自分で言うのも何だが、非常にいい感じ。
次の試作の出来がよければいよいよ量産。

いっちょ進めてきたいと思います。

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写真は御宿・岩船海岸。
ブルースカイブルー。

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8/7追記:台風の影響で上海便が欠航になり、8/10出発に変更になりました。おかげで日曜は自宅・成田間を往復して日が暮れるという素敵な休日になりました。


2011年7月22日金曜日

誰から電気を買いますか?


前回より続く)僕の家では太陽光発電に200万円投資して、最初の半年間の余剰電力買取で約8万円の利益を得ました。
このまま元をとるには12年半かかりますが、現在審議中の再生エネルギー促進法案の柱である「固定価格全量買取制度」になったらどうなるか、はたしてそれは良いことなのか、というのが今回の話です。

「発電能力編」で書いたように、うちの1月から6月の総発電量は計2,700kWhでした。
7月から12月も同じペースとすると1年で5,400kWh、これに法案の買取単価である42円を乗じると、年間収入は23万円になります。

わお!1年で23万Yen!これなら9年弱で元がとれるし、もし太陽光パネルが20年もったら(法案では買取単価は10年保証ですが、もし20年変わらなかったら)250万円も利益が出ます!すげーー!菅首相がんばれーー!

・・・とは思いません。

結局のところ買取制度というのは、余剰だろうと全量だろうと「屋根とお金(太陽光パネルの初期投資)を持っていない人から持っている人への、有無を言わせぬ所得の移転」です。
補助金とか助成金というのはあまねくそういうものですが、なんかこう、政策としてイマイチだと思いませんか?*

そこで考えたいのが、電力完全自由化です。

実は今でも、地域独占の電力会社(代表は東電)以外にもPPSと呼ばれる発電事業者(製鉄会社とか商社とか)がいて、大口需要家(工場など)はどこの電気を買うか選べるのですが、小口需要家(つまり家庭)には選択権はありません。
これを、家庭でも自由にどの発電会社から電気を買うか選べるようにするのが、電力「完全」自由化なのです。

ソフトバンクが発電事業に参入しようとしていますが、買取制度の元では、ソフトバンクは東電など地域独占の電力会社に電気を売るだけで、我々消費者は今までどおり東電などから電気を買います。
一方、電力完全自由化の状況では、ソフトバンクも東電もその他の会社も同列の発電会社として競争し、消費者がどこから電気を買うか選ぶのです。
(その場合、発電会社ごとに送電線を作るのは非効率かつ非現実的ですから、東電など既存の電力会社は発電機能と送電機能に分かれ、各発電会社は送電会社の電力網を借りて送電することになります。これが「発送電の分離」です)

地域独占+買取制度は発電する企業/個人からするとほぼノーリスクですから、短期的には参入者が多く効果が出やすいでしょう。
現にソフトバンクも「全量買取を条件に」発電事業を始めると表明しています。
しかしそれでも、完全自由化には以下のメリットがあります。

国民全員が能動的に関与できる
地域独占+買取制度の元では、自分は自然エネルギー推進に貢献したい、と思っても、屋根(または土地)とお金がなければ能動的には何もできません。
特に東京など大都市圏には、エコ意識が高く太陽光パネルを買うくらいの余裕もあるのに、マンション住まいなので何もできない、せいぜいブログやTwitterで意見を書くくらい、という人が大勢います。
家で太陽光発電をやっていれば、発電モニターを1-2時間眺めるだけで太陽光の効用も限界もすぐ理解できるのですが、やっていないとなかなか実感としてわからないため、中には非常に観念的・精神論的な、やればできる的な話を繰り広げる人も少なくなく、不毛な議論の元にもなっています(感じ悪くてすみませんが、僕もわかりませんでしたから)。
完全自由化の元であれば「どの発電会社から電気を買うか選ぶ」ことによって、日本人全員が、能動的に電力政策に関わることができます。

強く健全な発電会社をつくる
固定価格全量買取制度も永遠ではなく、太陽光であれば10年間、風力などその他は15〜20年が買取保証期間という案になっています。
つまり10〜20年間はソフトバンクなど発電会社は一切、競争も営業活動もなしに売上が保証されるわけです。
発電会社には、買取保証期間が終わっても潰れたり撤退したりせずに電力を供給し続けてもらわないと、意味がないどころか国にとっては損失でしかありませんが、10〜20年も競争がなく補助金漬けだった企業が、補助金がなくなった後も存続できるでしょうか。
いいえ。健全な競争だけが健全な会社をつくる、と僕は思います。

電気代が最適化される
全量買取では、買取原資が電気代に上乗せして集められますから、必ず電気代の値上げを伴います。
一般家庭は数百円の値上がりで済むと言われていますが、製造業など産業部門にはわずかな値上がりでも大打撃ですし、何より誰も価格をコントロールできないのは大問題です(現にスペインは全量買取のコストコントロールに失敗し、財政破綻寸前に陥りました)。
自由競争の元であれば、電気代は自ずと需給がバランスした価格に収束します。
(ただし自由化すれば価格が必ず下がるということではありません。米国などでも、自由化で逆に価格が上がった例もあるようです)

もちろん電力完全自由化にも問題はあります。
大きく二つ上げると、一つは供給責任が不明確になることで停電リスクが高まる点(カリフォルニア電力危機が記憶に新しいですね)、一つは自然エネルギーの比率が高まるかわからない点でしょう。
後者に関しては、自然エネルギー発電会社にはある程度の補助・助成は必要だと思います(税制優遇、送電会社にRPSを課す、自然エネルギー電力の支払いに使えるエコバウチャーを家庭に配る、など)。

ただいずれにせよ、「政府主導で」「補助金ジャブジャブの」「一部の人しか能動的に関与できない」全量買取制度より、「民間主導で」「自由競争の」「国民全員が能動的に関与できる」完全自由化を軸に議論を進める方が健全だし、自由化された電力市場に敢然とチャレンジするイケてるベンチャー企業がいたら、電力も買いたいし投資もしてみたい、と僕は思うんですけどね。

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*補足
日本では自然エネルギー≒太陽光ですが、買取制度を導入して自然エネルギー先進国とされているドイツとスペインでも、太陽光の割合はそれぞれ2%, 3%にとどまっているのが現実です。
理由は太陽光の稼働率が低いためです。例えば、ピーク時電力の20%に当たる発電容量を持っていても、稼働率が10%であれば総消費電力の2%にしかなりません。
逆に着実に伸びているのは風力ですから、全量買取でいくのであれば家庭の太陽光など冷遇して、風力や地熱(日本は地熱資源が豊富と言われる)が一気に立ち上がるような制度設計にすべきです。

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写真は木場の運河。