2010年1月22日金曜日

ステルスモード


iruka、淡々と進んでます。
大きな区切りでは変わらず「試作中」なんだけど、中身は刻々と淡々と。

12月に上海で打ち合わせしたときの未決事項がようやく全て固まり、今は図面をアップデートしてるところ。
前輪折りたたみのロック機構とか、ハンドル折りたたみ機構とか、折りたたむとフリーになるチェーンテンショナーとか。
いろんな人に「なんでそんなに時間かかるのか」と聞かれるけど、駆動系以外のパーツはほぼ全て独自開発するので、ま、時間かかります。

後輪の折りたたみ機構はだいぶ前に固まっていたので、前輪やハンドルは既製の有り物を使ってとりあえずリリースしてしまうという選択肢もあったかもしれないけど、僕は「拙速より巧遅」を選んだ。
経営なんてもんは結果が全てで、「正しい者が勝つ」ではなく「勝った者が正しい」世界。
irukaも成功すれば「時間をかけて完成度を高めたのが良かった」と言われるだろうし、逆に失敗すれば「完成度が低くても早くリリースすべきだった」とか言われるだろう。
この道を選んだからには、とことんいきます。中途半端な製品は出しません。

とはいえ、もちろん早く出したいw
図面ができ次第上海に飛んで、試作第二弾にとりかかります。

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写真は砂丘にたたずむオリックス。アラビア砂漠。


2010年1月7日木曜日

株主至上主義に喝ですと?


遅まきながらあけましておめでとうございます。

irukaは上海での試作初号機開発に向けて図面を引き直してるところです。
しばらくはステルスモードですね。

さて、Twitterでもさんざんぱら話題になり、僕も憤りのあまりしつこくRe/RTしてしまいましたが、民主党の参議院議員・藤末健三氏の主張について書きます。

議員は上場企業を規制する「公開会社法」の施行を推進しており、自身のブログでこう書かれています。

最近のあまりにも株主を重視しすぎた風潮に喝を入れたいです。
今回の公開会社法にて、被雇用者をガバナンスに反映させることにより、労働分配率を上げる効果も期待できます。


趣旨を意訳すると「最近の企業は人件費を抑えて利益と配当を増やしている。もっと人件費を上げて社員に還元すべき」ということでしょう。

日本企業が株主至上主義だとは全く思いませんが、百歩譲ってそれが事実だとしても、果たしてそれはいけないことなのでしょうか?
国の税収の観点で見てみます。

アシカ社、トド社、アザラシ社という、売上が全く同じ3つの会社があります。
単純化のため、3社とも費用は給与だけ(家賃など他に費用はかからない)とします。

アシカ社は他の2社より社員が多く、給与が高めです。その結果、売上10000に対して費用9500、利益は500です。配当は払っていません。
トド社とアザラシ社は効率経営を標榜し、売上10000に対して費用7000、利益は3000です。トド社は内部留保重視のため配当なし、アザラシ社は利益の50%を配当として株主に還元します。

社員が払う給与所得税・住民税を額面の5% (まあざっくりね)、企業が払う法人税を利益の40%、株主が払う配当課税を10%として考えると、3社の企業活動によって発生する税金は以下のようになります。

社名アシカ社トド社アザラシ社
売上100001000010000
費用(全額給与)950070007000
利益50030003000
配当001500
給与課税a475350350
法人税b20012001200
配当課税c00150
税金合計a+b+c67515501700


どうでしょう。税金を多く支払う/発生させる=社会貢献と定義すると(税金は国の再分配の原資ですから)、藤末議員が言うところの「株主至上主義」のアザラシ社が最も社会に貢献し、逆に「労働分配率が高い、社員に優しい」アシカ社が最も貢献していないことになります。
現実はここまで単純ではないですが、他の2社がアシカ社と同じ労働分配率を強いられたら、全体の税収は半減することになります。
いかに議員の主張が感覚的で物事の一面しか見ていないかということです。

もちろん、だから株主至上主義の会社が良いと言ってるわけではありません。3社とも「アリ」だと思います。社会貢献は納税だけではありませんし、上の例はあくまで単年度だけの話です。僕も個人的には、人件費を切り詰めて株主還元を厚くする会社は好きではありません。

大切なのは、経営方針は会社の個性であり、経営者が自由に決めるべきということです。
どの会社が支持されるかは市場(消費者、労働者、投資家など)が決めるわけですから、多様な経営スタイルの会社が競い合った方が、全体の利益は大きくなるはずです。
政府は企業をコントロールしようなどと考えず、企業が公平に競争できる環境づくりに専念していただきたい。
切に願います。

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写真はアラビア砂漠。年末年始はドバイの砂漠の中で過ごしました。