2016年9月7日水曜日

iruka、故郷に帰る


7月にirukaの試作第五弾(T6)を台湾から引き取ってきた後、工業デザイナー角南さんとともに次の量産前最終試作(T7)に向けた変更点の検討を行っていました。

んで、大体まとまったので、8月末に台湾のOEM工場に打ち合わせに行ってきた。

工場は中部の南投市という街にあります。
マスコット犬、トトがお出迎え。


現物を見ながら「ここをこう変えようと思う」「いや、こうした方がいい」「こうか」「んだ」と話すのが早いので、iruka T6も日本から連れていきました。

生家に帰ってくつろいだ様子のirukaたん。
心なしかモザイクも薄いような。



iruka本体だけでなく、コンパクトトレーラーiruCart、脱着式リアキャリアiruCarryの製造についても話してきました。
いずれもクリティカルな点はクリアできたと思います。

帰国の日、フライトまで少々時間があったのでシェアサイクルUbikeで台北の街をひとっぱしり。


魯肉麺とマンゴーアイス食べて、



iruCartの試作にiruCarryの試作とリュックをくくりつけて帰ってきました。風呂敷最強。


さあ、T7の完成はいつだ!?

--
冒頭の写真はモロッコ、フェズの革なめし地区。


2016年8月30日火曜日

iruka T6レビュー 〜スリープモード編

以前も書きましたが、前職では職場のビルに駐輪場がなかったので、自転車通勤の際はDAHONヘリオスを折りたたんでオフィスに持ち込んでいました。

当初はオフィスにポツポツと空きスペースがあったので置き場所には困りませんでしたが、年に2倍のペースで人が増え続けていたので、スペースが足りなくなったらまずいなあと、結構気をもんでいました。

まあ最悪、自分の机の下に突っこめばいいだろう、そう思ってある日試してみたら、何と入りません。
机の高さは70cm、DAHONヘリオスの折りたたみ時の高さは65cm。ぱっと見は入りそうでしたが、机の天板と引出の厚みがある分だけ足りないのです。

というわけで、irukaは最初から一般的な事務机の下に入る折りたたみ形状・サイズにしようと考えていました。

高さ60cmを切ることを目標に設計を考え始めましたが、そのうち、どうせなら50cmを切りたいと思うようになりました。
というのも、新幹線は前の座席との間(座面前端から前席の背もたれまでの距離)が50cm強なので、折りたたみ時の高さが50cmを切り、厚みが30-40cm程度で縦置きが可能な形状であれば、足の間に置けるのです。

DAHONは車両の最後尾の席の裏にしか置くことができず、輪行のときはいつもホームで列車を待ちながら、自分が乗る車両の最後尾スペースを確保できるか、やきもきしていたものでした。
最後尾スペースは早い者勝ちなので、空いていなければ別の車両に移るか、デッキで立っているしかありません。
自分の座席に置ければ、もちろん窮屈ではありますし、お隣の席の乗客に気を遣うことにはなりますが、それでも輪行の心理的なハードルはだいぶ下がります。

18インチ×1.50のタイヤの直径が約43cmですから、折りたたみ時に車輪径内に車体がすべてほぼ収まっていれば、高さ50cmをクリアしていることになります。

その結果できたirukaのスリープモードがこちら。毎度モザイクですみません。



この写真ではサドルを引き抜いてしまっていますが、サドルを入れても、座面が車輪の上端よりほんの少し上に来るくらいに収まります。

というわけで、irukaスリープモード、高さ50cmを切っております。切っております。大事なことなので二回言いました。

--
冒頭の写真は安曇野にて。送電線と青空。グリッド。


2016年8月23日火曜日

iruka T6レビュー 〜ウォークモード編<後編>

前編より続く。

「前輪と後輪を平行かつ同軸上にフリーな状態で折りたたんで、転がして運べるようにする」

これがウォークモードの要件ですが、現バージョンの試作(T6)では、後輪が微妙に車体と干渉していて、うまく転がりません。

車輪がフリーな状態ということは、タイヤはもちろんのこと、タイヤと一体で動く箇所のすべて、リム、スポーク、フランジ、車軸、ブレーキローター(irukaはディスクブレーキなので)などが、折りたたんだときに他のどこにも触れていない必要があります。

・・・これが簡単ではないんですよ。

うまく転がってくれない人↓


車輪周りのスペースを広め広めにとって設計すれば無難ですが、逆に広くしすぎると今度は折りたたみサイズが大きくなってしまう。

つまりウォークモードとスリープモードの完成度は、ある程度トレードオフの関係にあるのです。

かといって、運びやすさと収納しやすさ、どちらも犠牲にするわけにはいきません。

折りたたみサイズはそのままに、少しでも車輪周りのマージンに余裕をもたせられるよう、最終試作に向けてミリ単位の微修正を行っています。

--
最終試作の打ち合わせのため、あさってからまた台湾に行きます。

--
冒頭の写真はモロッコの青い街、シャウエン。の夜。


2016年8月2日火曜日

iruka T6レビュー 〜ウォークモード編<前編>


前職の会社で、大手町ビルという、やたらめったら横に長いビルにいたことがあります。
通常は真ん中にエレベーターが集中しているビルが多いですが、大手町ビルは東西方向に200メートル近い長さがあったため、東側・中央・西側にそれぞれエレベーターがありました。

駐輪場がなかったので、自転車通勤時は自転車(DAHONヘリオス)をビルの入り口で折りたたみ、西側のエレベーターで9階まで上がって、西の端近くにある自分の席まで運んでいました。

朝はいいのですが、夜帰りが遅くなると大変でした。
というのは、夜10時を過ぎると西側と中央のエレベーターが止まってしまい、帰るためには西の端から東側のエレベーターホールまで、自転車を持ち上げて運ばなければならなかったのです。
DAHONヘリオスは重さ10kgジャストと、折りたたみ自転車としては非常に軽い部類に入りますが、持ち上げて100メートル以上歩くのは結構な負担で、「転がして運べたら楽なのになあ」と思っていたものでした。

セカンドバイクとして手に入れたブロンプトンには、転がし運搬用にキャスター(補助輪)が付いていましたが、キャスターの車輪径が小さいこと、ベアリングが入っていないこと(自転車の自重で車軸の摩擦が大きくなってしまう)から、どうもうまく転がりません。
スムーズに転がすためにカスタマイズでキャスターを大径化したりベアリング入りの車輪に付け替えたりするユーザーも多いのですが、どうもエレガントではないな、と思っていました。
だって、自転車には最初からベアリングが入った大きな車輪が、二つも付いているんですから。そう、前輪と後輪です。

そこでirukaは、設計のかなり早い段階から、前輪と後輪を平行かつ同軸上にフリーな状態で折りたたんで、キャスターがなくても転がして運べるようにしたいと考えていました。

それがirukaのウォークモードです。
こんな感じです。


ってモザイクだらけで何がなんだかわからないですよねw
まあ、大きさの感じと、サドルを持ち手として転がすことだけわかってもらえれば。

長くなったのでレビューは次回。

--
冒頭の写真はマラケシュの路地裏の猫。モロッコはどの街も猫が多い。猫だらけと言っても過言ではない。


2016年7月26日火曜日

iruka T6レビュー 〜ウェイトモード編


irukaとは・・・
優れた走行性能を備えながら、一般的な折りたたみ車より40%小さく折りたたむことができ、かつキャスターなしで転がして運べる「連れて歩く変身自転車」です。
シーンに合わせて①ランモード ②ウェイトモード ③ウォークモード ④スリープモードの4つの形態に姿を変え、ユーザーの移動能力を大きく拡張します。
もう少し詳しくはこちら

--
今回はウェイトモードのレビュー。

ウェイトモードというのは、後輪だけを折りたたんだ、駐輪時の形態です。
irukaにはキックスタンドが付いていませんが、リアフォークの前端が接地して支えになり、スタンドがなくても「お座り、待て」の姿勢で自立します。
全長が普通の自転車の半分くらいになるので、電柱と植え込みの間とか、ちょっとしたスキマ空間にも駐輪できます。

こんな感じ。
立った!irukaが立った!
毎度モザイク失礼します。


わかる人はわかると思いますが、ブロンプトンと同じ方式です。
最近ではTyrellのIVEも採用していますね。
ニュートンの言葉を借りて言えば、私たちは巨人の肩の上に立っているのです。

キックスタンドは便利ですが、駐輪するとき以外は無用な存在でしかないじゃないですか。
irukaは、走る・駐める・歩く・収納する、全ての機能をできる限り少ないパーツで実現したいのです。

同様に、折りたたみ時に転がして運ぶためにキャスター(補助輪)が付いた自転車もありますが、キックスタンドと同じくキャスターも転がすとき以外は不要です。
そこでirukaは、キャスターがなくても転がせるようにしたかったのです。前輪と後輪、二つも車輪が付いているのですから。それがirukaのウォークモードです。次回に続く。

--
冒頭の写真はマラケシュ旧市街の路地裏。めっちゃ迷路。



2016年7月14日木曜日

iruka T6レビュー 〜ランモード編


今回はiruka T6(試作第五弾)のランモード、すなわち走行性能に関するレビュー。
「irukaって何?」という方は前回エントリをご参照ください。

まず、前提として、irukaはもちろんツーリングなど長距離ライドで使ってもらってもよいのですが、やはりメインの利用シーンは街乗りを想定しています。
ですので、スピードや安定性など基本的な走行性能に加えて、発進停止や乗り降りのしやすさといった、街乗りならではの点も重視する必要があります。

iruka T6の主要なスペックとジオメトリは以下のとおり。

フレーム素材:6061アルミニウム
ホイール:18インチ×1.50
ギア:シマノAlfine8(内装8段)
ブレーキ:120mmローター機械式ディスクブレーキ
チェーンリング:53T
ホイールベース:1042mm
フロントセンター:620mm
リアセンター:430mm
BBハイト:280mm
ハンドル高:900-1000mm(調整機構あり)
折りたたみ方式:前三角・片持ちフロントフォーク・リアバックの三つ折り式(前三角上には折りたたみヒンジなし)

実際乗ってみてのインプレをいくつか。

▼フレーム剛性はばっちり。やはりトップチューブに折りたたみヒンジがないのが大きいのと、懸案だった片持ちフロントフォークも構造を見なおしたことで強度が上がりました。もちろん、硬けりゃいいというものでもないですが。

▼ヘッド周りの修正が効いてハンドリングの安定感が増した。立ち漕ぎも余裕ですね。逆に小径車特有のクイックさが好みの方には少し物足りないかも?

▼基本ジオメトリはオーソドックスですが、ハンドル高とシート高を変えることでかなり幅広く乗車姿勢を調整できます。軽量化のためにハンドル高の調整機構をやめようかという話も出ましたが、僕自身も気分や調子によってちょいちょいポジション変えるし、やはり必要だな。

▼ギアとブレーキはこれで確定。内装ギアは重くはなりますが、ほぼメンテフリーであることと、街乗り前提で考えると停止中に変速できる点が大きい。Alfineは11段もあるけど、タウンユースではToo muchなので8段でいきます。ディスクブレーキはとにかく止まりやすいのがよい。特に都内での街乗りは止まる回数が死ぬほど多いので。

▼街乗りでは乗り降りも頻繁なので、トップチューブが低くまたぎやすい方が良いと思ってます。そうするとステムが長くなって剛性が落ちる(私のダホンとブロンプトンもいささか心もとない)というデメリットがありますが、ステム根元のありそうでなかった折りたたみ構造のおかげで問題なさそう。

▼GD値(クランク一回転で進む距離)はトップギアで6m台半ば。もう少し重い方がよさそう。量産は56Tで考えようかと思います。

というわけで、総じて非常にいい感じです。
最終試作では全体的に肉厚を落としてダイエットするので、乗り味に軽やかさとしなやかさが増してくれるといいなと思ってます。

irukaと私。毎度モザイクで失礼します。サドルやや下げ+ハンドル上げでアップライト気味の姿勢で。



ランモードのiruka全景。モザイク(ry


--
冒頭の写真は年始に行ったバリはレギャンビーチの夕暮れ。


2016年7月6日水曜日

iruka T6レビュー、の前にそもそもirukaとは?


めちゃめちゃめちゃめちゃ久々にブログ更新。

iruka試作第五弾が完成して、先週台湾のOEM工場に引き取りに行ってきました。
フルセットの試作としては第五弾ですが、開発チーム内ではT6(Trial 6th 一部バージョンアップも含めると6つめなので)と呼ばれているため、以降はT6と書きます。

何回かに分けてT6のレビューを書くつもりですが、随分間が空いてしまったので、もう一度「irukaとは」を整理して書いておこうと思います。

irukaとは・・・
優れた走行性能を備えながら、一般的な折りたたみ車より40%小さく折りたたむことができ、かつキャスターなしで転がして運べる「連れて歩く変身自転車」です。

シーンに合わせて以下の4つの形態に姿を変え、ユーザーの移動能力を大きく拡張します。

1. ランモード
走行時の形態です。18インチホイール+トップチューブ上にヒンジのない高剛性フレーム構造+シマノ内装ギアAlfine8のコンビネーションにより、小径折りたたみ車としてはトップクラスの走行性能を誇ります。

2. ウェイトモード
後輪を折りたたんだ、駐輪時の形態です。リアフォークの前端が接地して支えとなり、キックスタンドなしで「お座り」の姿勢で自立します。

3. ウォークモード
前輪・後輪・ハンドルを折りたたんだ、歩行時の形態です。前後輪が平行かつ同軸上に折りたたまれることで、サドルを持ち手として建物の構内などをキャリーカートのように転がして運ぶことができます。

4. スリープモード
完全に折りたたんだ、収納時の形態です。折りたたみサイズは45cm×75cm×35cmと、一般的な折りたたみ自転車と比べて40%前後小さくなります(車輪径18〜20インチの折りたたみ車の縦×横×厚を乗じた値と比較)。

また、小径車特有のスペースを積載空間として活用する、荷物の大きさに合わせた3種類のキャリアアタッチメントを同時開発中です。
いずれも、サドルレール幅やハンドルポスト径など一定の条件を満たした小径車であれば、iruka以外でも使用可能です。

・ワンタッチ着脱のコンパクトトレーラー「iruCart」
サドルにつないで牽引するコンパクトサイズのサイクルトレーラーです。サドルから外せば荷物を付けたままキャリーカートとして使うことができます。

・簡単着脱のリアキャリア「iruCarry」
サドルと後輪の間のスペースに取り付けて使うリアキャリアです。工具類を使わずにあっという間に着脱できます。iruCartと共通のアタッチメントを利用します。

・バッグ用着脱フック「iruCatch」
ハンドルポスト裏のスペースをバッグ類の積載スペースとして活用する着脱式のフックです。ハンドルの端にバッグを吊るした場合や、前カゴに荷物を載せた場合に比べて、ハンドル操作に及ぼす影響がほとんどありません。

以上、すべてまだ「予定」ですがw

iruka T6に乗る私。モザイク失礼。


iruCartのテスト風景。モザイク失礼。


iruCarryをダホンに取り付けた図。モザ(ry


次回はT6の出来についてレビューしますね。

--
冒頭の写真は5月に行ったモロッコの「青い街」シャウエンの街角。内容とは関係なし。