2009年11月26日木曜日

羽田とインチョンをつなぐのだ その2


前回より続く)成田と羽田なら、羽田から海外に行けた方が個人的にも嬉しいし国にとっても良いと思う。

なんですけど、今話題の「羽田ハブ化構想」って無理だと思うんですよね。

まず、もう韓国のインチョン空港が完全に国際ハブ空港として機能してるから。
成田から海外94都市にしか就航してないのに対し、インチョンからは160都市に飛んでる。
2001年に開業したばかりなのに、既にハブ網が構築されてるわけですよ。
だから、羽田だろうが成田だろうが関空だろうが、インチョンからわずか2時間の日本に航空会社がもう一つハブを作るとは思えない。発着料もケタ違いに高いし、インセンティブがない。

それとハードの問題ね。
インチョンは4000m級の滑走路が3本稼動してて5本目まで計画が決まってるけど、羽田は3000mが2本と2500mが1本あるのみで新しく2500mを作ってるところ。
3000mじゃエアバスA380とかでっかい飛行機の欧米便は飛べないからね、滑走距離が足りなくて。
あと行った人はわかると思うけど、まあユーザー向けの施設の充実ぶりは羽田なんかとは彼我の差がありますよ。
キレイだし広いし店も多いし。

というわけで今さら羽田をハブに、なんて無理です。たぶん。
(成田はもっと無理だけど。滑走路が2本しかなくて拡張不可能だし騒音問題で24時間飛べないし)

で、実現してほしいのが、羽田〜インチョン便を飛ばすこと。
24時間、毎時1本くらいの勢いで、ガンガンに、シャトルバス感覚で。
もう羽田はインチョンの出張所になります的な姿勢で。
来年は羽田〜チャンギ便をシンガポールエアが飛ばすようなので、インチョンともつながれば羽田から全世界と行き来できますよ。
マジ希望。

とりあえず、月曜に羽田から上海に発ちます。

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森永卓郎氏が「羽田、成田、関空でスクラムを組んで仁川空港に対抗せよ」なんてコラムを書いてるけど、そもそも3つに分かれてたらハブじゃないだろとw。

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写真は朝焼けのヘルシンキ空港。


2009年11月25日水曜日

羽田とインチョンをつなぐのだ その1


来週の上海行きは羽田発。前の2回は成田だった。うれしい。
何がうれしいって、近い。
文京区の自宅からだと、成田までは2時間かかるけど、羽田までなら1時間。

このエントリは羽田をハブ化するとかタラタラ語ってないで早く羽田をインチョンにつなぐべきだ、と言いたくて書き始めたんだけど、まずは成田について書いておこうと思います。

首都および首都に準ずる大都市の空港はこれまでたぶん20以上使ってるけど、成田は外国人の出鼻をくじいてテンション下げる圧倒的世界No.1空港だと思う。

施設面とかは置いといて、何と言っても物理的な遠さとコストね。
僕は京成線をよく使うけど、特急で1時間10分かかった挙げ句に、連れてかれるのが日暮里とか上野でしょ。新宿とかに泊まるならさらに30分以上電車に乗らなきゃならない。
それでは、と京成スカイライナーにしたら特急と10分しか変わらないのに料金が倍、いきなり2,000円。
成田エクスプレスなら東京駅や新宿に直通で行けるけど、所要時間は大して変わらないのに料金は3,000円強。本数も毎時2本しかない。
んでもって間違ってタクシーなんか乗った日にゃ、都心まで2時間かかった上に料金25,000円也って、もう外国人暴れないのが不思議。
実際日本はデフレでヨーロッパなんかよりよほど生活物価は安いのに、入国して初めて払う料金がこれじゃ、先入観どおり「日本は物価が高い国」で脳内ポジション確定ですよ。

シンガポールのチャンギ空港なんかだと市街までタクシーで30分ちょいで1,000円いかない。
ロンドンとかパリとかヨーロッパ諸都市も電車やバスで1,000円前後で小一時間で着くし、タクシーでも1万円以上はかからないですよ。
バンコクとかデリーとか東南アジア諸都市は渋滞で時間かかるけど料金は安いし。

あえて成田の対抗馬を上げるならニューヨークのJFKか。
渋滞にもよるけど車で2時間近くはかかるもんね。
でもですよ。12時間のフライトと時差ボケの上に2時間近く車に乗ってヘロヘロになって最後にマンハッタンに入るとき、いきなり目の前にドカーンとニューヨークの高層ビル街が現れるわけですよ。映画とかで見たそのままの姿で。
おのぼりさんの価値観だけど、あれはテンション上がりますね。
成田にはそういうのもない。日本情緒溢れる水田地帯を通るわけでもないし。

いやホント、日本進出を検討するために来日した外国人経営者も、成田から入ったらテンション下がることはあっても上がることは絶対ないね。
損してると思うなあ。

長くなったので羽田とインチョンの話は追って。

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写真は機上から見た空。確かヘルシンキ上空。


2009年11月24日火曜日

ビバ空洞化


来週また打合せに行きますが、目下irukaは上海の工場で生産する方向で話を進めてます。

日本では、自転車の量産は実質的に不可能。
コストがどうこうと言うレベルではなく、発注できる工場がないのです。
10年前、そう、わずか10年前には自転車の国産対輸入比率は7:3だったのに、中国や台湾の工場に押されて今や国産比率は1割未満。
いわゆる「空洞化」が進んでいるのです。

と書くと何かネガティブに響くけど、自転車産業に限らず、国全体としては製造業の空洞化はポジティブな必然でしょう。
日本人の人件費が高くなった、すなわち日本人が豊かになった結果なわけですから。

なんですけど、こんなご時世だと、派遣村とかいう村の村長氏のように「海外生産はけしからん、日本企業は国内で生産して雇用を創出せよ」みたいなことを言う人が出てくる。
規制も保護主義も国全体の経済活動にはマイナスでしかないと、簡単にわかりそうなものだけど。

だいたい、最近とみに思うのは、今や企業の国籍を問うこと自体意味がない、ということ。

例えば、
ソニーや日産なんて外国人株主比率は5割超えていてトップも外国人だし。
ボルボは元々スウェーデンの会社だけど米国フォードの傘下に入って次は中国企業に買われるみたいだし。
アメリカのビール会社上位3社(バドワイザー、クアーズ、ミラー)は全てベルギーと南アフリカの資本だし。
もう、どこの国の企業か定義すること自体が不可能でしょ。

だから政府は、企業を規制しようとか保護しようとか、はたまた育てようとか下らないこと考えずに、国籍を問わず企業が活動しやすい環境づくりだけに集中していただきたい。
でもって、どの企業が勝とうが負けようが、企業が外需で稼ごうが内需で稼ごうが、日本の法人税収が増える仕組みだけ考えていただきたい。
それが結果的に日本を豊かにするし、世の中を変えるイケてる製品やサービスが日本から生まれる土壌作りになると思う。

もっとも日本は、健全で安定した政治体制(少なくとも、政府が企業に賄賂を要求して従わないと資産を没収してしまう、なんてことは起こらない)、治安、インフラという基本的な条件は世界トップ中のトップなわけで、あとは規制をなくして法人税率下げて(民主党は中小企業の税率下げるなんて言ってるけど、中小企業が大企業に成長する意欲を失わせる逆インセンティブであり愚策中の愚策)羽田からインチョンに直行便を飛ばせば、ぐぐっと魅力的になると思うんだけどな。

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写真はモンサンミッシェル。オムレツ、まずかった。


2009年11月10日火曜日

iruka、上海へ


月末に上海に行くことになりました。
iruka試作ゼロ号機を持って8月に会った製造パートナー候補を再訪予定。
うまく話が進めば量産を前提とした試作初号機(ヲタぽいな。。)製作に入ります。うまく進めば、ね。

前回上海に行ったときの話をあまり書いてなかったけど、その理由の一つは、上海ではBlogger(僕が使ってるGoogleのブログサービス)につながらなかったから。
そう、上海、というか中国では、BloggerやTwitterなど、国際ソーシャル系というか、世界に向けて個人が情報発信できるサイトにはアクセスできない。もちろんYouTubeもダメ。
前半は携帯のiモード経由でTwitterに投稿してたけど、後半は携帯からもつながらなくなった(Twitter側でもサーバートラブルがあったみたいで、原因はわからないけど)。
mixiやAmebaは問題なく見れて、これはまあ日本ローカルと判断されてるのかと。ちょっと寂しい感じもする。

言いたいことが言えるというのは、日本は、というか民主主義国家というのは本当にすばらしい。
水や空気と同じで、民主主義はなくならないと価値がわからないのかも。大切にしないと。

ともあれ三回目の上海、楽しみです。

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写真はノートルダム寺院。でけえ。


2009年11月4日水曜日

会社の存在意義


ひところ「会社は誰のものか」の議論が盛んだったけど、「会社は何のために存在するか」はあまり話されることがない気がする。

ものすごく乱暴に言うと

1. 利益を生むため
2. 雇用を生むため
3. 事業を行うため

の3つが回答としてありえるかと。

正解などなく、どこにどれだけウェイトを置くか経営者の価値観の問題だと思うが、僕は3だと思っている。というか3が好き。
会社は事業を行うこと、すなわち事業を通じて社会(その中に顧客が含まれる)に何らかの価値を提供するために存在していて、利益も社員も事業を行うためのリソースである、という考え方。
やりたい事業があり、その実現のために会社が必要である、と。

だから「この事業の発展が社会を直接良くすると自分が信じる事業」があればそれに没頭するのがハッピーだし、それが真にイケてる製品やサービスを生み出す必要条件の一つだと思う。
事業よりも人ありきとか、成長分野なら何でもやるという考え方は、アリとは思うけど、僕はちょっと違うな。つか、そうはしたくない。
古巣オプトの創業時は「まず起業ありき」で何を事業とするかは手探りだったけど、今はやりたいことが明確にある。

株式会社イルカは「折りたたみ自転車irukaの製造販売を通じて『常に自転車と共に行動するライフスタイル』を広めることで、ベンツに乗るより自転車に乗る方がイケてると言われる社会を実現する」ために作った。
まだ製品はできてないんですけどねw

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写真は薄暮のパリ。


2009年11月2日月曜日

クルマブランド自転車の仕組み


シボレー、ジャガー、ローバー、オペル、ランボルギーニ、などなど、街中に溢れるクルマブランドの自転車について解説します。

まず下の3枚の自転車を見てください。
それぞれ上から、シボレー、ローバー、ハマーとなっていますが、全て同じ車体の自転車です。





結論から言うと、クルマメーカーはこれらの自転車の製造には全く関与していません。どころか、本社ではこんな製品が世に出ていることすら知らないでしょう。

このビジネスには、ざっくり以下の三者の登場人物がいます。

 日本の商社
 クルマブランドのライセンス管理者
 中国の自転車メーカー

日本の商社は、クルマブランドのライセンス管理者に「うちの自転車にお宅のブランド名を貸してくれ」と持ちかけます。
もちろん有償です。
ライセンス管理者、という人たちには僕は会ったことがないのですが、例えばランボルギーニだとランボルギーニ家の分家の息子が任されているなんて話を聞いたことがあります。

同時に、商社は中国の自転車メーカーを訪ねて自転車の車体を買い付けます。
中国のメーカーの多くは、作った自転車を自社ブランドで販売しながらも、他社にOEM供給もしているのです。
めでたく話がまとまると、中国のメーカーは自社の自転車にクルマブランドのシールを貼り付けて日本の商社に納品、商社は自転車屋さんに、自転車屋さんは消費者に販売します。

上記のケースでは、3社の商社が同じメーカーの同じ車体を買い付けているか、同じ商社が複数のクルマブランドのライセンスを持っているかどちらかでしょう。

まあプロセスはどうであれ、それが良い自転車であれば何の問題もありません。
が、一般的にこういった自転車は、ブランド名からの期待値に対して品質は今ひとつと言わざるを得ません。
この手のクルマブランド自転車には折りたたみ車が多いのですが、「折りたたみ自転車は遅くて重く低品質」というイメージを強めてしまっているのは残念です。
無名ブランドの自転車に比べて期待値との落差がより大きいわけですから。

片山左京だか右京だか、昔クルマの運転手をしていた人が自分のブランドで自転車を売っていますが、これも同じ仕組みです。
下の2枚の写真、上は片山氏のブランドの自転車、下は別の会社が異なるブランド名で売っている自転車です。
同じですね(泥よけなど一部のパーツは異なりますが)。




彼は本格的な自転車乗りらしいですが、あまり友達にはなりたくありません。

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冒頭の写真はパリ、セーヌ川とエッフェル塔。ベタ。