2012年7月19日木曜日

<おすすめ書籍>銀輪の巨人(ジャイアント)


自転車に関する本は数多あるけど、自転車ビジネスについて語った本は少ない。
少ない、というか全く見たことない。

その意味で、本書は世界最大の自転車メーカーGIANTの成長の歴史と現在の姿を通じて自転車ビジネスを俯瞰した、非常に貴重な著作です。



すっごくおもしろかった。

何がおもしろいって、もちろん自転車業界の人間としてもおもしろいんだけど、自転車業界のみならず日本の製造業全般に広く普遍化して考えさせられる内容である点。

こんな感じ↓

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むかし、日本は世界有数の自転車生産国でした。
国産の自転車で国内需要を100%賄っていたのはもちろんのこと、欧米に対する最大の輸出国でもありました。

しかし、経済成長に伴う人件費の高騰と、GIANTなど台湾メーカーの台頭により、日本メーカーは1980年代から徐々に競争力を失っていきました。
2000年には輸入台数が国産台数を逆転、現在は内需の90%を輸入に頼り、対外輸出は事実上ゼロと、日本の自転車製造業はほぼ消滅したと言ってよい状況にあります。

日本にかわって輸出トップ国の座についたのは台湾ですが、その台湾も、中国の台頭に悩まされることになりました。
中国は安価かつ大量の労働力を武器にシェアを急速に奪い、台湾の自転車輸出はピークだった1998年からわずか3年後の2001年にはなんと5割減の479万台にまで激減したのです。
台湾メーカーも中国に工場を建設して利益の確保を図りましたが、台湾本土の空洞化は防ぐべくもありませんでした。

ところが、空洞化をなすすべなく見守るのみであった日本メーカーと異なり、台湾メーカーは自助努力によって活路を見出しました。
「高級化」です。

GIANTが旗振り役となって「Aチーム」と呼ばれる業界団体を結成、お互いの技術ノウハウを共有して台湾メーカー全体で技術レベルアップを図った上、トヨタのカンバン方式を取り入れるなどして経営効率化に努めたのです。
結果、輸出台数は2010年で507万台と横ばいでながら、輸出総額は15億ドルと2000年代初頭の3倍に成長、つまり1台あたりの輸出単価が3倍に高まったのです。
まるで絵に描いたような、高付加価値化の成功と言えるでしょう。

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どうですか。
なんかこう、テンション上がりませんか。
日本だって、と思いませんか。

ちなみに僕が通っている中国の工場も台湾資本。いろいろ学ばせてもらいたいと思います。

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冒頭の写真はフィレンツェ、夕闇迫るヴェッキオ宮。